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才能を開花させる育成を

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公益財団法人横浜市国際交流協会(YOKE)が運営する横浜市南区の「みなみ市民活動・多文化共生ラウンジ」(以下・みなみラウンジ)は、横浜中華街などで働く移住労働者の子どもたちの学習支援等を行っているが、昨年から彼らの才能を開花させる「育成」にも力を入れている。

横浜市の公立小学校・中学校には、約7千人の「外国につながる子ども」たちが在籍している。みなみラウンジは「南区外国人中学生学習支援教室」を開き、生徒たちが個別指導を受けられるようにしている。

現在25人が通うが、中国人が多く、来日したばかりという生徒もいる。彼らは、日本語の会話に不自由しながらも、難解な理科や数学などを必死に勉強する。教室が終わると、緊張感から解放されて、同ラウンジの中国人コーディネーター王慶紅(おうけいこう)さんを囲んで、せきを切ったように母国語で話し、つかの間の「休息」を楽しむ。

日本では外国籍児童・生徒は義務教育の対象外。公立学校への就学を希望する場合は、日本人と同じ教室で、日本人と同一の教育(授業)を受ける。しかも、学齢主義であるため、日本語の習熟度に関係なく、年齢相応の学年に編入する。「日本語ができない。授業が理解できない」など、「できない」部分ばかりを見つめて、劣等感を抱く者も多いという。

そこで、みなみラウンジの木村博之館長は、昨年から中国の伝統楽器「二胡(にこ)」の奏者で、中学2年の銭詩韻(せんしいん)さんの応援を始めた。1月10日、みなみラウンジの協力により写真展「横浜中華街の人々」がフォーラム南太田(南区)で開催され、オープニングイベントに銭さんが登場。二胡で中国の風景を表現するなど全8曲を披露した。

銭さんは来日して3年半になる。当初日本語は全く分からなかったが、公立小学5年に編入した。「週2回、中国語の通訳ボランティアが授業に付いてくれました。他の日は通訳がいないので、授業が分からなくて座っているだけでした」(銭さん)

得意技を生かす

転機になったのは、昨年12月、「かながわ留学生音楽祭」にゲスト出演したことだ。銭さんは6歳から二胡を習い、中国の全国大会少年部門で優勝。昨年、二胡の最高レベルに合格している。

木村館長はこう話す。「学校でも地域でも外国人は“支援の対象”としてしか見られません。銭さんの場合も、中学の先生や同級生たちは、彼女の二胡の才能を知りませんでした。『外国につながる子ども』たちは、日本語ができないことばかり指摘されてしまいますが、彼らのプラスの面を見ていけば、さまざまな才能があることに気付かされます。それは、母国も日本も豊かにする“宝”です」

一方、前述の写真展「横浜中華街の人々」で作品を披露した写真家の横山和江さん(30)。中国生まれだが、9歳の時、横浜に移住した。やはり来日当初は全く日本語が分からなかった。猛勉強の末、大学に進学し、米国留学も経験したが、「日本語も中国語も完璧ではない」という劣等感はなかなか消えなかった。

しかし、大学時代に1カ月、フランスでボランティア活動に参加、人生観が一変した。

「高校時代から好きだった写真を“道具”にして、各国の若者たちとコミュニケーションを取ることで、言葉の壁を超える体験をしました。その時、カメラマンになるという夢を見つけました。より良い社会をつくるために、カメラ(写真)を通して人と人をつなげたいと思ったのです」

横山さんは、カメラを通して世界が広がっていくのを感じている。また、横浜中華街に生きる人々を撮影したことで、自分が日本人なのか中国人なのかというアイデンティティ(独自性)の悩みも解決したという。多くの「華人」(日本国籍を取得した中国系の人)と出会い、自分も同じだと気づき、気持ちが落ち着いたと語る。

みなみラウンジの王さんもこう強調する。「発音をからかわれ、日本語の苦手意識を持って話さなくなってしまい、友達ができない子ども、いじめられて不登校になった子どももいます。中国では成績が1番だったのに、来日し、日本語ができなくて挫折してしまうケースもあります。支援者や同じ経験をした先輩たちが、子どもたちに自信をつけさせていく工夫が大事だと思います」

(「カトリック新聞」2015年1月25日付より 一部省略して再編集)


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